<外国人記者と行く、荒木町夜更かし散歩 ⑤ ~「TORYU 鉄板焼き鳥」の巻>

かつてこの近くの編集部に10年くらい勤務した経験から、土地勘だけはあるフリー編集者のシゲが、Tadaima Japanの外国人記者と荒木町を散策する企画。今回はまた新しい記者のアンソニーが登場します。向かうのは愛媛のご当地グルメ、今治焼鳥が食べられる話題のお店です。場所は一般に「荒木町」と呼ばれるエリアからは少し離れていて、津の守坂を下り切る前の左側・・・あれ?どこかで書いたような・・・あ、前々回取材した、Bar BoTaNiCaLの隣のお店でした(^_^)

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今治焼鳥、知ってますか?

さて、今治焼鳥とは? 愛媛出身の方はもちろんご存知でしょうが、鶏肉を串に刺さず、網ではなく鉄板で素早く焼く方式の鶏料理。これを今治では「焼鳥」と呼ぶそうです。北海道では豚肉の串焼きを「焼鳥」と呼びますから、それに比べれば看板に偽り無しですが、この今治式の焼鳥屋さんも、都内には数軒しかないという珍しいスタイルのお店です。

アンソニーとは四谷三丁目駅で待ち合わせてお店に向かいます。来日9年目の38歳アメリカ人。リバーサイドというロサンジェルス近郊の街の出身です。なんとも風情のある地名があるんですね。日本に来たきっかけは?と尋ねると、

「きっかけ・・・つまりは・・・なんで・・・?」

そうそう。

「子供の時、私たちの年齢の人は、もう日本、ホントに大影響。ゲームとか、クルマ、エレクトロニクス、テレビとか、たくさん、いいもの、日本から、来ます。だから、大学入った時、私の専攻はBusinessとか経済なんだけど、一年だけ、language勉強しないと(いけないので)。それで日本語選んで、最初、絶対できないけど、(そのうち)できて、先生も日本人だ(った)から、いいimage出てきて」

その後リバーサイド市の職員になった際に旅行で何度か訪れて日本の良さを確信し、来日する決意をしたそうです。現在は海外事業を行う日本企業や、海外から観光客を誘致したい自治体向けにコンサルタント業を行いながら、将来はwriterーつまり記者や執筆者ですねーを目指しているそうです。

仕事で英語を使うことが多いせいか、来日9年目の割にはまだ日本語がたどたどしいですが、誠実そうな外見も相まって、一生懸命日本語を話す感じに好感が持てます。

熱心にメニューをメモに取るアンソニー。writer志望ということで、録音している僕に「おすすめは?(メモか録音か)」と聞くので、要点を素早く記憶するにはメモがいい、と答えてあげました。外国人特有の言い回しがきちんと再現できるので、僕はこの取材ではあえて使っています

さて、お店に入ってメニューを見ると、モモ焼き、皮焼き、つくねなど、確かに焼鳥屋さんのメニューです。そんな中、「バラ焼き」、しかも親とヒナ、とあって、これは何かと店主の正岡さんに伺うと、串に刺さないから「バラ焼き」。つまりノーマルの「焼鳥(親)」」と「焼鳥(ひな)」ってことです。

箸の使い方に国の違いがあることを教えてもらう

「野菜、野菜・・・」とアンソニーがつぶやいているので、ネギ焼きと、モモ焼き、皮葱焼き、バラ焼きの親とひな、さらに「つくね、つくね」ともつぶやいていたのでつくねもオーダーしました。

と、手元を見ると箸袋に「CHOPSTICK」とあり、裏面に箸の使い方が書いてありました。

英語での箸の使い方説明書き。最近インバウンドが多いもんね、と思う方もいるでしょうが、僕がこれを初めて見たのは麹町のうなぎ屋さんで、今から35年くらい前でした。実はけっこう昔からあるんですよ

「最近、外国人のお客さんが増えているので」と正岡さん。するとアンソニーが

「あ、日本スタイル」

日本スタイル?

「私は最初韓国人に箸の使い方習ったから韓国スタイルです」

へー、韓国では箸の持ち方違うの?

「韓国ではひとり・・・ひとつの指で、こう」

片方を一本の指で持つというのはこういうこと。つまみにくそうにモモ焼を掴むアンソニーでした

とアンソニーが見せてくれた持ち方は、写真のように上の箸に添える親指以外の指が人差し指一本。下の箸が固定されるやり方のようです。安定はしていますが、小さい豆なんかを取るのはやりにくい。それにしても箸の持ち方が国によって違うなんて56年生きていて全然知りませんでした。

鶏肉本来のおいしさが楽しめるモモ焼(¥650)と、カリカリの皮葱入(¥370)。串に刺した焼鳥では味わえない食べ応えです。しかも安い
このように鉄板で焼くのが今治スタイル。ガスバーナーで表面を炙ることで皮のパリパリの食感を生み出します

オーダーしてすぐにまずはモモ焼きと皮葱焼きが登場。皮を食べると

「うん、crispy!」とアンソニー。

「ホントだ。カリカリでおいしいね」となにげなくこちらが話すと

「カリカリ? あ、sound。日本語でそれ、多いですね」

なるほど、確かに日本語のおいしい形容詞って、擬音が多いかもね。肉厚なモモ焼きも旨味が効いてておししいです。続いてバラ焼きの親とひな。見た目は一緒ですが、親はコリコリ(また擬音だ)と食べ応えがあって、ひなは柔らかい食感。

「こっち(ひな)が好きかな」とアンソニーは言いますが、日本人は、きっと食べごたえのある親のほうが気に入る人が多い気がします。特にお酒のアテとして頼むならこちらがいいんじゃないでしょうか(下戸なのでイマイチわかりませんが)。ちなみに僕なら両方頼みます。なんていっても両方ともこのボリュームで380円(税抜)という安さですから。

バラ焼。左が親、右がひな(ともに¥380)。といっても見た目はあんまり変わりません。でも食感は全然違う。ぜひ食べ比べてほしいですね

最後にダチョウメニューがあるのが気になったので、正岡さんおススメの刺身と、締めの鶏みそ飯と鶏スープをオーダーしました。ダチョウって英語で何て言うんだっけ・・・?と考えていたら、

「Ostrich?」

あ、そうそう、オーストリッチ、だね。刺身は馬刺しのような味わいでおいしかったです。

ダチョウ刺し(¥950)。他にソーセージ(¥680)やステーキ(¥1,500)もあります

ここで正岡さんも会話に加わってくれて、

「一応、英語メニューあるんですよ」と見せてくれました。ああ、「Ostrich」って書いてあります。

「先ほどもお話しましたが、外国人客も増えているので友人に作ってもらったんです。外国の人は、一度気に入った人がいると同じホテルのお客さんに話してくれるので、来る時は次々いらっしゃいますね」

つくねは自家製卵黄タレがついて¥550。ハンバーグ並みのボリュームです

 

シメは鶏スープ(¥280)と鶏みそ飯(¥850)

 

荒木町のお客さんは酒の呑み方がうまい

お店は2年くらい前にオープンされたとのことですが、荒木町なのは偶然ですか?

「いや、偶然ではないですよ。今治出身なんですが、最初に東京で住んだのが抜弁天(余丁町の厳島神社)のあたりだったので、荒木町へもよく来てましたから。荒木町のお客さんは、酒の呑み方がうまいですね」

酒の呑み方がうまい。

「自分のペースで呑んで、他のお客さんとも話が弾むし、勝手に仲良くなってしまう感じですね。個人の店が多いのもそういう雰囲気を作っているんだと思います」

なるほど。新宿のど真ん中で、そうした庶民的な雰囲気が残っている場所は珍しいですもんね。

「ショミンテキ、つまりは昭和の匂い・・・?」

お?アンソニー、日本語たどたどしい割には、難しい言葉も知ってるんだね!

「なつかしい、という(ことですね)」

うんうん、writer志望なら、たとえそれが英語でのwritingでも、言葉のアヤは知っておかないとね。

正岡さんに取材中のアンソニー。正岡さんも外国人目線での荒木町の良さを逆取材していました

 

正岡さんが友人に作ってもらったという英語メニューをアンソニーに見てもらう。「ハイボール」を「Hi-Ball」と書いてありましたが、が和製英語なので、どう言えば伝わるか考えだすアンソニー。「whisky with soda?」でも「soda」はコーラなどの甘い炭酸飲料の意味があるし・・・じゃあ「carbonated water?」とか言っているうちに、「ハイボールはハイボールでいいと思います」だって。正岡さんによると、アジア系の人には「ハイボール」で伝わることが多いそうです

「将来はもっとcalm(落ち着いた)なところに住みたいけど、外国人にとってのチャンスは東京に多いですから、今は新宿がイチバンですね。新宿大好き。なんでもある。荒木町ではこうやって(取材で)writingの勉強もできていいです」

どうやらアンソニーの言う「新宿」は「新宿区」くらいの広さを言っているようです。摩天楼があって、歌舞伎町があって、荒木町もある。東京の中心でどこへ行くにも便利。普段僕らは区単位で地理を考えることは少ないけど、正岡さんの住んでいた抜弁天とか、神楽坂もあるし、確かに新宿区は他に比べて、東京が凝縮されている場所かもしれませんね。そういうことは日本人より海外からの観光客や在日外国人のほうが、フラットな目で見るからより知っているんだなあ、と感心しつつ、お店を後にしました。

おしゃれな外観ですが、30年くらい続いた居酒屋さんの居抜きだそうです。店内奥には半個室状態の落ち着いたテーブルもあります。

 

※アンソニーの記事はこちら
Toryu: Bringing the Flavors of Imabari to Araki-Cho

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Tadaima Japan Editorial Team