舞楽と能って何?
1,300年前に天皇や貴族が楽しんだ舞、「舞楽」(ぶがく)。そして、舞踊と音楽と演劇が融合した古典芸能である「能」。聖武天皇祭では、この舞楽と能を無料で堪能することができます。舞楽と慶讃能が奉納されるのは、東大寺大仏殿と南大門の間にある鏡池に設置された鏡池水上舞楽台です。
今年の舞楽の演目は、『振鉾(えんぶ)』、『加陵頻(かりょうびん))、『胡蝶(こちょう))、『納曽利(なそり)』、そして慶讃能の演目は、『仕舞(しまい)』、『連吟(れんぎん)』、能『楊貴妃(ようきひ)』でした。詳しくご紹介しますね!
稚児舞がかわいらしい、舞楽
総勢300人近い練り行列が大仏殿へ向かう中、鏡池水上舞楽台では、春日大社古楽保存会による舞楽奉納が始まりました。
一番始めの演目は、舞楽の上演前に舞台で鉾(ほこ)を振るい、舞台を清める儀式的要素の強い『振鉾(えんぶ)』です。

そして子供達による『稚児舞』の演目が続きます。清純無垢な稚児は、古来より神に最も近い性格をもつと信じられ、神が寄りつくとされました。そのため日本では、神社仏閣での芸能で主要な役を与えられ、稚児による芸能が伝承されることになりました。
最初の稚児舞は、美しい声で歌う極楽の人面鳥が飛び舞う演目『加陵頻』、そして、美しい蝶の羽を背負い、山吹の花を身に着けて舞う『胡蝶』と続きます。


ここで稚児舞が終わり、舞楽最後の演目、能楽面をつけて舞う『納曽利』で、舞楽奉納が終了しました。

伝統芸能の能を堪能!
慶讃能(けいさんのう)は、「東大寺の大仏造立を発願した聖武天皇の遺徳を偲び、大仏様に日本を代表する伝統芸能である能楽を奉納することで、共に生きる喜びを表現しよう。」との思いから奉納されることになったものです。
今年の慶讃能で奉納されたのは、能の見せ所のみを抜き出して、8~10人構成のコーラスグループ・地謡(じうたい)だけで舞う『仕舞(しまい)』、舞台に座ったまま演目のクライマックス部分のみを数人で謡う『連吟(れんぎん)』、そして最後に能『楊貴妃(ようきひ)』です。



最後の演目、『楊貴妃』は、中国、唐の玄宗皇帝の妃の楊貴妃から着想を得たもので、唐の玄宗皇帝に仕える呪術師が、殺された楊貴妃の魂を見つけるように勅令を受け、死者の国を訪れるところから始まります。



池の上の舞台に艶やかな衣装と踊りが映える、とても美しい演目でした。
写真撮影スポット、鏡池

舞楽台が設置された鏡池は、普段は水面に鏡のように大仏殿の姿を映し出す、絶好の写真撮影スポットとしても知られています。池の中に柄付きの鏡のような形の島があることから、「鏡池」と呼ばれるようになり、その島には弁財天が祀られています。
また、この池には環境省のレッドリストに絶滅危惧種指定されている珍しい魚で、奈良県指定天然記念物のワタカ(馬魚/ばぎょ)という水草を好んで食べる魚も生息しています。
東大寺に訪れた際は、鏡池もぜひチェックしてみてください。
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