中国道教の神様、鍾馗ってどんな神様?

奈良町の町家に飾れている飾り瓦は、鍾馗といいます。鍾馗はもともとは中国の民間伝承に伝わる、道教系の神様です。中国の唐代(618〜907)に実在した人物といわれ、次のような話が伝えられています。
唐の6代皇帝玄宗がマラリアにかかり、病床で夢を見ました。宮廷内で悪戯をする小鬼をどこからともなく大男が現れて、捕まえて退治してしまいます。玄宗は、大男におまえは何者か?と訪ねました。すると「私は終南山の鍾馗といいます。官吏になるための採用試験に落ち、それを恥じて自殺しましたが、高祖皇帝が手厚く葬ってくれたので、その子孫に恩を返すため参りました。」と告げました。
目をさました玄宗のマラリアは、すっかり良くなっていました。不思議なことに感じ入った玄宗は、画家に自分の夢でみた鍾馗の絵を描かせました。
この伝承から、鍾馗は邪悪なものや疫病から家を守る魔除けの神様として信仰されるようになりました。
町家の屋根に置かれているのはなぜ?奈良町で鍾馗瓦を探してみよう!
鍾馗は中国から日本へ伝わり、江戸時代(1603〜1868)頃から、関東地方で五月の節句の人形にしたり、絵や旗を魔除けとして飾るようになりました。近畿地方では、鍾馗瓦を魔除けとして屋根に置く風習がみられるようになりました。
今回は江戸時代の町家が多く残る奈良町を散策しながら、鍾馗瓦を探してみましょう。
住吉神社を背に奈良町の道をまっすぐに進んでいきます。
どんどん進みます。

突き当たりのT字路には、菊岡漢方薬局があります。

道を直進していると見えてくるのですが、ちょうど正面に見える菊岡漢方薬局の屋根の上に何か小さな人形のようなものが、置かれています。
鍾馗瓦です。

鍾馗瓦はT字やL字など路地の突き当たりにある建物に置かれます。道教では魔物は直進しかできないとされていて、魔物が道を曲がらずに家の中に入ってこないように置かれるそうです。

鍾馗瓦を見つける5つのヒント!
他にも鍾馗瓦が置かれるパターンには、T字やL字など路地の突き当たりにある建物も含めて全部で5つあります。
- 向かいの建物に大きな鬼瓦がある:
向かいの鬼瓦に弾かれた邪気や悪霊が、家内に入らないように、鬼より強いとされる鍾馗を飾る。 -
T字やL字路など路地の突き当たりにある建物:
道教では魔物は直進しかできないと信じられており、魔物が道を曲がらずに家へ入り込まないように、鍾馗を魔除けで配置する。 -
神社の正面や寺院の横斜めの建物
立地が神様に近すぎて、かえってよくないため。 -
墓地や霊地の隣にある建物:
死霊や悪霊を防いだり、強すぎる霊力を持った場所からの影響を減らす。 -
その他:
鬼瓦以外の方向から邪気などの侵入が考えられる場合。家主の好みにより任意の場所に置く。

奈良町では、屋根に飾られる鍾馗瓦以外にも、お店の店先に魔除けとインテリアもかねて置かれているのも目にすることができます。これは、上のヒントでいうと5番目のパターンですね。
普段、あまり気にしない瓦屋根ですが、鍾馗瓦を探しながら歩いてみると面白いです。
鍾馗瓦が置かれる場所のヒントをもとに、奈良町を歩く機会があれば鍾馗瓦を探してみてください。
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