すべてに無駄がないエコ
お米が収穫される秋、日本では田んぼでは刈り取った後の稲を干している光景をみることができます。昔の農家では、冬の農閑期には藁細工で生活用具を作っていました。そして残った藁を落ち葉と一緒に積み重ねて腐らせて田んぼの肥料としたり、家畜に飼料として与えていました。また藁から作られた生活用具は、たとえ壊れても、燃やしてしまえば灰が肥料になり土にかえるので、無駄がありません。こうして稲のすべてを有効活用し、循環型の生活を営んでいたのです。
藁で作った生活用具って?
草鞋(わらじ)という履物や雨笠、雪靴など、その用途の場は広範囲に及びました。ビニール袋や紙袋がなかった時代には、藁で食べ物の食べ残しやお土産を包んで持ち帰ったりもしたそうです。藁葺き屋根といって、屋根を藁でふくこともありました。
現在、藁にかわる安価な素材が登場したことや時代の流れにより、こうした生活用具や屋根を普段の生活の中でみる機会は減ってしまいました。

日本食の代表、納豆にも藁を使用
日本食の納豆も、昔は藁に包まれて売られていました。藁に包まれた納豆は保温力が強く、1本の藁にはなんと1000万個の「納豆菌」が含まれていたといいます。また、原料の大豆が納豆になる途中でだすアンモニア臭を藁が吸収して消してくれるので、臭いを気にせずおいしく食べることができました。現在は、衛生上の観点から、プラスチックの容器にはいった物が主流になっていますが、こだわりをもって、昔ながらの藁納豆を製造しているメーカーもまだ健在しています。

藁と伝統文化
藁は日本人の祭礼や伝統行事とも深いかかわりあいがあります。
お正月に飾る「しめ縄飾り」や神社で見る「しめ縄」も実は、藁からできています。
しめ縄飾りのないお正月やしめ縄のない神社…考えただけでも味けないですよね。日本の各地域には、このような藁細工の技術や伝統を残そうと工房を立ち上げたり、活動を続けている人たちがいます。秋になると田んぼでよくみる藁ですが、実は日本人の伝統文化を陰でささえてきた歴史と、ものを無駄にせず上手く活用していく智恵がそこにはあったのです。奥深いですね。

