日本の墨絵スタイルで描かれるヨーロッパの風景たち
カタリーナが墨絵を学び始めたのは今から8年前の2007年のこと。元々大学ではイラストレーションを先行していた事から絵画への教養があった彼女ですが、墨絵を15年以上教えているドイツ人の師匠Rita Böhm (リタ・ボーン)の元で5年間墨絵の技術を学んだそうです。日本に訪れた事のない彼女ですが日本の墨絵のもつ「空白を生かす」スタイルに「飽くなき美への追及心」を感じると言います。カタリーナの作品の多くは彼女が訪れたヨーロッパの国々の風景を描いたもの。西洋の国々を東洋の絵画技法で書くことで新たな価値を生み出す―。その姿勢に彼女の持つ自由な精神とまだ見ぬ国日本への憧れのような思いが見えます。
あまり知られていない墨絵(水墨画)のルーツ
墨絵の技術は中国の唐時代末(705–907)〜宋時代(960–1274)の初め頃にかけて発展し、中国へ留学した僧侶達が墨絵を持ち帰りました。中国の墨絵の模写から始まった日本の墨絵ですが、後に日本らしい墨絵のスタイルを確立していき、室町時代(1338–1573)には全盛期を迎えます。この時代に栄えた山水画は日本の豊かな山や川などの自然をモデルに描かれています。自然の風景を描く事が好きな彼女にとって、日本の墨絵から受けた影響は大きいそう。特に彼女が強く日本の墨絵に惹かれる理由はその「空白」感だと言います。
「真っ白い空間の中に一人で佇んでいるような、そんなイメージが日本の墨絵にはあるのです。中国の墨絵は画面いっぱいにたくさんの絵が描かれていることが多いので、そこが2つの墨絵の違いと言えると思います。」

ミルクで描く墨絵!? 新しく発見される驚きの画法が次々と・・・!
インタビュー中彼女は度々「白い空白」という言葉を口にしました。その空白を絵の上で再現するためになんと「ミルク」を使うこともあるそうです。そうすることで、ミルクで描いた部分には墨汁がのらず、空白のまま残す事ができます。日々試行錯誤しながら新しい技術を考えだしているそうですが、これには驚きです。また、より作品を幻想的にさせるために紙を裏返しにして描き、表面に良い具合にしみ込んだ絵を作品として展示しているものもありました。そんな彼女の型にはまらない表現方法を完成させるのはベルリンのトレードマークである「くま」のスタンプ。署名代わりに押される落款は彼女に馴染みのない日本語や中国語で書かれているため、自分にとって一番しっくりとくる「くま」のスタンプを押しているそう。ベルリンを拠点に活動するアーティストらしい何とも多文化が入り交じった考え方です。彼女の詳細やギャラリーでの展示スケジュールは以下の詳細をチェックしてみてくださいね。
● 墨絵アーティスト Katharina Hacker (カタリーナ・ハッカー)
1957年12月12日ドイツ・ブレーメンにて出生。1977~1982年までハノーファーの大学でイラストレーションを学びが食い取得。1982~1986年にはバイエルンとベルリンにてアートの修復・保存を専攻し、学位を取得。2007年から2012年までの5年間墨絵マスターのRita Böhm (リタ・ボーン)の元で墨絵を学び、現在は墨絵アーティストとしてベルリンを拠点に活動中。
● Under The Mango Tree Design Studio + Art Gallery
ベルリンのインターナショナルなアーティストを中心に取り扱うギャラリー 。様々な展示を行うほか、インドと直接やりとりをしながらテキスタイルデザインの請負、製作発注のプロジェクトも進行している。
WEBSITE: http://www.utmt.net/