原爆の悲惨さを伝える歴史の証人「原爆ドーム」
私は今回、原爆ドームに初めて訪れました。
テレビなどでは何度も見たことがある建物ですが、実際に見たとき、いったいどんな気持ちになるのだろうと思いながらたずねてみました。
1945年8月6日、この建物からわずか160メートル離れた場所の、上空600メートルで人類史上初の原子爆弾が爆発しました。そんなに近かったにもかかわらず、爆風が真上から吹いたことなどの理由から、この建物は奇跡的に全壊を免れました。しかし、建物の中で働いていた30名ほどの方は亡くなり、また広島全体が壊滅的な状態となりました。
ここがまさにその場所なんだ、と。
言葉が出ませんでした。
その惨事を思い出したくないからと、原爆ドームの取り壊しを求める声もありましたが、原爆の悲惨さを忘れないため、1966年に永久保存が決定されました。そして、1996年、世界遺産に登録されたのです。
もとは発展していく広島の産業をPRする建物でした
ここはもともと、広島県内の物産品の展示・販売をする「広島県物産陳列館」という建物でした。広島県美術展覧会や博覧会なども行われていたそうです。
1915年、チェコ人の建築家ヤン・レツルの設計で建てられました。ヨーロッパ風の華やかで美しい建物は、観光名所としてもにぎわっていましたが、その後の戦争の激化に伴い、行政機関の事務所として利用されるようになったそうです。
核兵器の廃絶と、恒久平和の大切さを全世界に伝えたい
「思ったよりも小さいな」というのが、最初に遠くから原爆ドームを見たときの感想でした。しかし、少しずつ近づくにつれ、静かに悠々とたたずんでいるように見えるのに、とても悲しく、辛く、怖くも感じられ、私はこの建物の前からしばらくは動くことができませんでした。
物言わぬ建物ですが、とてもたくさんの事を私たちに訴えています。核兵器廃絶、そして世界中の平和を、こんなにも願ったことはありません。
原爆投下から70年、建物が完成してから100年。原爆ドームは老朽化が進み、その保全が課題となっていますが、今年の秋からは耐震工事を行うそうです。
できるだけ永く、できるだけ多くの人に、この場所に訪れていただきたいと、心から思います。
Map
広島県広島市中区大手町1−10