みなさんに、ドイツで見つけた「日本」をお届けします
新コーナー「ドイツで見つける日本文化」では、現在ドイツ・ベルリンに長期滞在中のライターわさびが現地で出会った日本文化や現地で活躍する日本人などを取材し紹介していきます!今回は首都ベルリンのペーパーグッズショップ『RSVP』で行われていた和装本ワークショップで先生のアレクサンダーさんを取材させていただきました!
日本ではあまり注目されていない「和装本」
2014年、和紙が無形文化財に指定され注目を集める中、日本の伝統的な装丁様式である「和装本」は日本国内ではあまり話題にのぼりません。むしろ、この本の装丁様式が日本の伝統であったことを知っている人も少ないのではないでしょうか?私もその一人で、このワークショップが行われるまで「古書に使われている装丁」というイメージしかありませんでした。
講師のアレックスによると、和装本は日本に古くから存在する技術だそうです。19世紀半ばに日本が開国をした時期に西洋の装丁が輸入され、日本の本は次々に和装本から西洋式になっていき、和装本の技術が忘れられて行きました。今回ワークショップで制作した「四つ目綴じ」の製本技術は江戸時代(1603-1868)に最も多く作られたそうです。
自分の手で、お気に入りの紙を選んでつくる楽しさ
ワークショップにはDIYや工芸に興味のある参加者が集まりました。 机の上に並べられた見慣れないツールに皆興味津々です。まずそれぞれ自分の好きな紙を選ぶことからワークショップは始まりました。私は和紙でできた青い幾何学模様の紙を選んでみました。これは本番用として練習用の和本を作った後に使います。紙を束ねて金槌で穴をあける作業や紙を糸で束ねる作業等、先生の注意を聞きながらやっていると気がつかないうちにすごく集中していて、ふっと製作の世界にのめり込んでしまいます。TadaimaJapanでも以前江戸切子のワークショップを行いましたがあの時同様、携帯にもテレビにも邪魔されず何か一つのことに集中する時間というのは今の時代なかなか作りにくいものですよね。そういう意味でもワークショップはそれ自体とても生活を豊かにしてくれると思います。
見た目の美しさと伝統の知恵に魅了されて・・・
講師を務めたのはオーストリア・ウィーン在住のアレクサンダーさん。大学でデザインを学んだ後、日本の和装本に出会いその見た目の美しさに惹かれたそうです。「ドイツやヨーロッパには同じような装丁はない。」と彼は言います。和装という、かなりマイナーな領域に目を付けた彼はボストン大学に行き和装に関するアーカイブ文献を自分で調べ、自分で和装技術を学んだというからその情熱に驚きです。現在は隔週で週3日ウィーンのワークショップで和装本技術を教えているそう。「和装本は簡単で、見た目も美しくて自分の手で作った感触があるところが気に入っています。作った本は友達にプレゼントすると喜ばれます。」

おもしろい柄の紙や変わったテクスチャーの紙を選んで綴じる紐の色を変えると何通りもの和本が作れます。和装本がこんなに可能性のある技術だとは思いもしませんでした!
それにしても、オーストリアに住むセルビア人の彼がこの日本の伝統文化をヨーロッパで広めているという事実がとても興味深いです。
人やモノが自由に移動するグローバル時代でも、何かを新しく、面白くするきかっけはやっぱり「文化の違い」なのかもしれません。
アレクサンダーさんのデザイナーとしての活動、ワークショップ情報はウェブサイトをチェックしてみてくださいね!
【詳細情報】
Aleksandar Todorovic
http://aleksandartodorovic.com/