食べ物への挨拶
ご飯を食べる前、ちょうど胸のあたりで手を合わせて合掌し、『いただきます』と挨拶をしてから、食事をします。食べ終わると、食前と同じように合掌をして『ごちそうさまでした』といいます。
神様にお祈りをするとき、ご先祖様にお参りをするとき、日本人は合掌をします。
合掌をする対象は、尊い人であり、合掌するとき、心を清らかに一心にします。
手をあわせない人もいるようですが、『いただきます』と『ごちそうさま』の言葉は、日本人が当たり前のように毎日繰り返している挨拶であり、マナーです。
『いただきます』
「いただく」は「食べる」「もらう」の謙譲語です。神様にお供えしたものを食べるときや位の高い方から物を受け取るときに、頂(いただき。頭の上)にかかげたことに由来しています。
「頂きます」には「私の命のために他の動植物の生命を頂きます。」の意味があります。生きていくためには、他の生命の命を自分自身の糧という形で犠牲にしなければなりません。そこには、尊い命を頂くという感謝の気持ちがこめられています。
また、食卓に食事が並ぶまでにはたくさんの人の時間と手間がかけられています。その人たちへの感謝の心も「いただきます」という言葉には込められています。
『ごちそうさま』
「ごちそうさま」は漢字で「御馳走様」と書きます。「馳走」は走りまわるという意味があります。昔は冷蔵庫もなく、食事のための食材をそろえるためにあちこちを走りまわらなくてはいけませんでした。
「御」は丁寧語で「御馳走」でもてなすという意味が含まれるようになり、贅沢な料理をさすようになりました。「様」は人の名前などの後ろにつける尊敬を表す言葉です。
自分をもてなすために、いろいろなお店をまわり、食材を用意し、食事をつくってくれた人へ感謝と尊敬の気持ちを込めて「様」がつき、「御馳走様」という食後の挨拶が生まれました。