外国人記者と行く、荒木町夜更かし散歩③ ~「Bar BoTaNiCaL」の巻

まいど、フリー編集者のシゲです。出版社時代、30年位前から10年ほどこの近所に編集部があったこともあって土地勘だけはある私が、荒木町の魅力を外国人記者と食べ歩くコーナー。今回はいきなりバーから始まります。
今日のお店、住所は荒木町なんですが、一般的に「荒木町」と呼ばれているエリアからは少し離れています。土地勘のある人なら、津の守坂を一番下まで下りたあたり、と言えばわかるでしょうか。


東京でも珍しい、ビーガン・ベジタリアン対応フードのバー

お店の名前は「Bar BoTaNiCaL」。「ボタニカル」は「植物由来の」といった意味で一般にもよく使われますね。ここは実はバーではあるんですが、料理がすべてベジタリアンやビーガン(乳製品、卵など、動物由来のものは一切口にしない、「完全菜食主義者」)の人に対応したお店なのです。

津の守坂を下り切る少し手前の左側に落ち着いた雰囲気のバーがあります

何度も書いていますが、完全な下戸の私がこのお店をチョイスしたのは、今日一緒に取材するアメリがベジタリアンと聞いたからです。でも、最初に断っておきますが、ここはあくまでバー。もちろん食事メインで訪れるのもかまいませんよ、とマスターの光村さんはおっしゃいますが、お一人でやっているお店なので、混雑している時に大勢で食事をいっぺんに頼むとかは控える、くらいのマナーは持って訪れたいですね。

物静かで優しい雰囲気のマスター、光村さん

さて、本当の最寄駅は曙橋だと思うんですが、四谷三丁目から歩いたもんで、早めに着くつもりがギリギリになってしまい、アメリはもうお店の前で待っていました。

早速お店に入ると、オープンして1年半、という割にはチャラチャラしてない、落ち着いた空間です。光村さんの趣味もいいのでしょうが、なんでも以前は40年くらい喫茶店だった場所だそうで、居抜きではないんですが、そうした歴史も落ち着きを演出しているのかもしれません。

しかし、だとしたら、僕がこの近くに勤めていた時にその喫茶店、あったはずですが、覚えがないです。当時このあたりは、あまり人通りがないエリアだったからだと思うんでですが、光村さんによると、

「今はけっこう近くに住んでらっしゃる方が多いですよ。特にキャリア系の女性の方とか。ビーガン・ベジタリアン、ということもあるんでしょうが、ウチは夜0時過ぎくらいから、お一人で遅い食事とお酒を楽しまれる女性の常連さんが中心です」

確かに、来る途中にももうすぐ入居開始しそうな新築マンションがありました。荒木町を取り巻く住環境は変わってきているんですねえ。まあ、こちとら30年も前の話だしね。

待たせてしまったアメリと早速落ち着いた店内へ。メニューには英語も書いてあるのですが、アメリ曰く、これがまたすごいんだそうです。詳しくは後半で

今日の相棒、アメリはフランス人で、日本に来て6年。子供のころから「ドラゴンボール」や「スラム・ダンク」「セーラームーン」などのアニメに親しんでいたので、大学生の時に交換留学で一度来日し、6年前に念願叶って再来日を果たしたそうです。見ていたアニメのラインナップがなんとなく男っぽいのはさておき、彼女は今後「Tadaima Japan」専属の外国人スタッフとして、日本文化と荒木町の魅力を海外に発信していってくれます。

では、バーですから、まずはお酒から。「甘いものが好き」というアメリは今日のおススメの「イチゴのダイキリ」に素早く反応。早速オーダーします。

「おいしい、すごいイチゴの味がします」

一般的にはダイキリはラムとライムジュースのカクテルですが、こちらはイチゴを使っている、ということですね。確かにおいしそうです。僕も飲んでみたいけど、飲むと大変なことになるのでガマン。

こちらが「イチゴのダイキリ」。赤くて、甘い(そう)

ベジタリアンのイメージを覆すがっつりメニュー

乾杯したところで、早速ベジタリアンメニューにもトライ。「自家製ファラフェル」はひよこ豆のコロッケ、「きのことクルミのサラダ」に、「ほうれん草ときのこのソテー」。パスタも欲しいので、アメリが選んだのは「ボタニカル・ナポリタン」。

あんまり頼むな、とか書いておきながらどんどん食事を頼んでしまいましたが、今回は19時来店。まだ僕らしかお客さんがいなかったので、無理を言いました。

マスターおススメの「きのことクルミのサラダ」¥580
「ほうれん草ときのこのソテー」¥580

ファラフェルとは中東ではメジャーな料理だそうです。食べてみるとカレー味でものすごくおいしい。それに、ベジタリアンメニューのイメージから来るあっさり感は全然ないです。具はひよこ豆を潰してペースト状にしたものとタマネギ、とのこと。つまりジャガイモは使っていないのです。言われないと気づかないと思いますが。

「自家製ラファフェル」¥680。ここではひよこ豆ですが、そら豆や両方をブレンドしたレシピもあるそう。イスラムの戒律が厳しい中東の伝統料理です

豆はベジタリアンにとって重要なタンパク源ですから、豆料理のバリエーションの多さが、ベジタリアンライフの豊かさのポイントになるみたいですね。アメリによると、

「最近カリフォルニアの友達のところに行って食べた、豆やきのこで作ったハンバーグがすごくおいしかった」

やっぱりこうしたものはアメリカやヨーロッパのほうが進んでいるのかな。

「でも日本でも、居酒屋さんとかは、ベジタリアンにとって食べられるメニューが多いですね。イタリアンもお肉の入っていない料理が多いし、頼めば肉抜きにしてくれたりもします」

そういえば、今日出してもらった「ボタニカル・ナポリタン」も、ひとことで言って濃厚なうまさです。そもそも、居酒屋とイタリアン合わせたら、東京の外食でかなりの割合を占めるだろうから、ベジタリアンライフって、そんなに大変じゃないのかもしれませんね。

「ボタニカル・ナポリタン」¥980。「名前にボタニカル、と付いているから」というシンプルな理由でアメリがチョイス。普通の、いや普通以上においしいナポリタンです。しかしどれも安いですね~

キャリア系女性のオアシス的存在?

アメリの場合、信念や宗教的な理由でベジタリアンなわけではなく、

「ずいぶん前からやってみようかな、って思いつつ難しいかなとか考えていたんですが、やってみたらカンタンでした」

ということで、日本に来てからのベジタリアンだそうです。どうです? みなさんも、健康のためにもトライしてみては。当然、光村さんもベジタリアンですよね?

「いえ、全然(笑)」

えー!?

「ただ、元々、野菜が好きではあります。前々から、バーのフードって、ジャンキーなものが多いよな、と思っていて、夜遅くいらっしゃるお客さんが多いのに、どうなんだろう、と思って、こういうスタイルにしました」

なるほどなー。最近女性中心に住民が増えた、という話題が先ほど出ましたが、女性が多いのはこの店の特徴な気がしますね。あまり喋り過ぎない物静かなマスターに、ベジタリアンメニューとこだわりのお酒。おそらくまだまだ男性よりはストレスの多い女性キャリアにとってはオアシスのような場所なんだと思います。

カウンター席奥には5名くらいがゆったりくつろげる半個室的スペースがあります。

光村さんもここの開店を機に荒木町に移住されたそうで、
「住みごごちが良すぎて、荒木町を出ることがほとんどなくなってしまいました」
とのこと。

お酒にも凝り性なマスターのこだわりが

ここはバーなので、お酒の話ももう少し。アメリが追加で頼んだのは「シナモン薫る(香る、ではないところが一捻り)スパイストラム」をロックで。白葡萄とシナモン、バニラビーンズのスパイスが入ったラムベースのカクテル。

「きれいな色のお酒ですね。後味がすごくおいしい」

アメリの好感の持てるところは、食べ物や飲み物に関して、「いい」と表現してもいいところをいつも「おいしい」と話すことです。「後味」は「いい」って言うでしょ? 彼女はあえて「おいしい」を使っている気がします。

ちなみに光村さんはウィスキー党で、シングルモルトを独自にブレンドした「ボタニカル・ピュアモルト」はこのお店でしか出会えない味。

マスター自慢の「ボタニカル・ピュアモルト」¥1,200。この小さな樽に数種類のシングルモルトをブレンドして入れています

さらにIPA(インディアンペールエール)というビールの種類もある、と聞くやアメリが

「おー!」

と感動。このサイトでも以前紹介したビアバー、「まる麦」で飲めましたよね。彼女もそこでいたく気に入ったようで、同じ荒木町でまた飲めることに驚いていました。

荒木町のビアバー、「まる麦」の那須さんにも教わったIPA(インディアン・ペール・エール)の「スルガベイ・インペリアルIPA」¥900。名前の通り、静岡の地ビールです
本文にはないですが、最後にさらに「茄子のムサカ」¥680も頼んでしまいました。ムサカはギリシャ料理。ラザニアに似たものです

最後に、アメリが光村さんに聞きたいことがあるとか。

「東京のお店では珍しいことに、英語メニューにまったく間違いがないんですが、自分で翻訳されたんですか?」

「あ、本当ですか? 間違いないですか?」

「はい。完璧です。普通、ちょっとププッっとなっちゃう英語があるものなんですけど。光村さんは外国のお客さんが来たら英語で話されるんですか?」

「いえ、まったく(笑)。英語は話せないです。ただ、外国のお客さんが多かったので、自分で英訳しました。間違ってないか不安だったんです」

英語メニューの完璧さに驚くアメリ。英語が話せないのに独訳で完璧とは、光村さんはやっぱり凝り性ですね、おそらく。お酒にも料理にも、こだわりが感じられます

うーん、この人、なんとなくタダ者じゃない気がしますね。とにかく、落ち着いた雰囲気でヘルシーにゆっくり酔う、荒木町の新しい名店にぜひみなさんも足を運んでみてください。

ちなみになんで子音が大文字なんですか?と聞いたら、「なんとなくそのほうが見栄えが良かったので」と光村さん。え? てことは、このレタリングも光村さんが?「はい」
帰り際、外にあった看板に「ビットコイン使えます」の表示が。どこまでも凝り性の33歳です(笑)

※アメリの記事はこちら
Bar Botanical, a cozy vegetarian bar in Arakicho

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Tadaima Japan Editorial Team

Information

Address 〒160-0007 東京都新宿区荒木町16 エスペロビル103
Hours 18:00~3:00(L.O.2:30)
Price 3,000~4,000円
Close 毎月第一水曜日
Access 都営新宿線曙橋駅A4出口 徒歩2分
東京メトロ丸の内線四谷三丁目駅4出口 徒歩10分
Phone 03-6679-6116
Language 日本語
英語
Website http://bar-botanical.com