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「路地」は本来「道」の意味ではなかった

日本には「路地裏の名店」という言葉があります。「路地」はもともと「露地=覆いのない地面」という意味の言葉で、英語の「alley=庭園や公園にある小径」とほぼ同じ意味で使われていました。

ですが国土が狭い日本では、限られた土地を有効に使う慣習があり、古くは大名の屋敷くらいにしか、「庭園内の小径」など存在しませんでした。

土地いっぱいに建てられた庶民の家と家の間には「路地」並みの空間しかなかったことから、自然と「狭い道=路地」という認識ができてきたものと思われます。

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「路地」は道であり、庭であり、庶民のコミュニケーションの場でもあった

「路地」は道であると同時に、庶民にとっては「庭」でもありました。「路地裏」とは「人目につかない路地」という意味であり、人と人との交流の場でもあったのです。今でもヨーロッパなどでは、こうした空間はよく見られます。

「路地裏の名店」という言葉が日本で定着しているのは、ただおいしい店なのではなく、その地域に根付いた文化に触れられる場所としても、行く価値がある店が路地裏には多いからでしょう。

大通りに面していないのですから、偶然見つけることは難しく、その地域に興味があってわざわざ訪れる人か、その地域の知り合いに連れて行かれた人でないとたどり着けない。でもたどりついた暁には、おいしい料理と、その土地の文化と人の温かさに触れられる、それが「路地裏の名店」なのです。

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街自体が「路地裏の名店」で成り立っているといってもいい、荒木町

東京において「路地裏の名店」が多い地域としては、下町や、区画が入り組んでいる広尾、麻布などがあり、グルメガイドなどにもこうした地域の店がよく紹介されていますが、江戸時代からの路地の文化や雰囲気を残し、おいしい店が狭い範囲に数多く集まっている、という点では丸ノ内線四谷三丁目駅と津の守坂に挟まれた荒木町が群を抜いています。

ここは東京に住む人々にもあまり知られていない場所ではありますが、付近にマスメディア関連の大手企業が多かったこともあり、比較的余裕のある常連客で成り立ってきた歴史があります。

しかし近年、常連以外のお客さんも多く迎え入れよう、という動きを街全体で進めており、若い人や外国人にも入りやすい雰囲気に急速になりつつあります。

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これだけジャンルが豊富な「路地裏の名店」が狭いエリアに集まっているのは貴重

荒木町の「路地裏の名店」の特徴はまずそのバラエティの豊かさ。花街時代から続く古い家屋で営業する少し高級な和食屋さんから、イタリアン、カフェ、ラーメン、洋食、うなぎ、バー、そして大衆居酒屋など、ありとあらゆるジャンルが揃っています。また、こうした街にはなくてはならない(?)スナック。いわゆるカラオケマシンと粋なママのいるところですね。こうした店は、ゴールデン街のようにそればかり集積しているエリアでもないと何軒ものきを連ねているところは少なくなりました。

荒木町一帯には、歩いて一周しても10分もかからないほど狭いエリアに、300軒ものこうした昭和の風情を感じさせるお店が集まっていることも特徴です。高低差のある路地は、昼間散歩していても楽しい場所。元の道は屋敷内の小径だったところが多いので、こじつけて言えば、本来の「路地」が原点の場所でもあります。

ぜひ、日の暮れる前からブラブラ付近を散策してから、お気に入りの店をみつけて飲み歩き、食べ歩きしてみてください。

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Tadaima Japan Editorial Team

Information

Address 東京都新宿区荒木町
Access ・丸ノ内線四谷三丁目駅下車 徒歩5分 ・都営新宿線曙橋駅下車 徒歩10分